副業をしている人にとって、気になるのが「税務署から目をつけられたらどうしよう…」という不安。
確定申告をしていなかったり、経費処理がずさんだったりすると、税務調査の対象になることは十分ありえます。
そして、税務調査で誤りが見つかると、追加で税金(本税)を支払うだけでなく、ペナルティとして「加算税」や「延滞税」などが課されることになります。
今回は、副業サラリーマンに向けて、税務調査でどんなペナルティがあるのか、どれくらいの金額になるのか、どんな対策を取るべきかを詳しく解説します。
税務調査とは
税務調査は、税務署があなたの所得や申告内容が正しいかどうかをチェックする調査のことです。
突然通知が来たり、ある日、自宅や職場に訪問されるケースもあるため、「怖いもの」「ややこしいもの」として敬遠されがちです。
税務調査の種類
税務調査には、大きく分けて次の3種類があります。
- 簡易な接触
・電話での問い合わせ
・文書での問い合わせ
・税務署への呼び出し - 実地調査
・予告あり、税務署から調査に来る
(2~3日程度)
・予告なし、税務署から調査に来る
(2~3日程度) - 強制調査
・脱税の疑いが濃厚な場合に、国税局査察部(マルサ)が令状を持って強制的に行う。
税務調査の日程は変更できる
実地調査(予告あり)の場合、電話で国税調査官が日程を伝えてきますが、交渉によって変更が可能です。
税務署の調査能力は想像以上
税務署の情報収集能力は年々進化しています。
さまざまな方法で取引履歴や収入状況を把握しており、「見逃されているだけ」の可能性もあります。
質問検査権
税務署は税務調査の際に「質問検査権」という強い権限を持っています。
これは、納税者に対して帳簿や証拠書類の提出を求めたり、質問に答えさせたりすることができる権利です。
オンラインプラットフォームにも照会可能
税務署は大手サービス事業者に対しても取引情報の開示を求めることができます。
- メルカリ
- Amazon
- 楽天
- ヤフオク
- ウーバーイーツ
- ランサーズ
- クラウドワークス
- ココナラ など
これらのサービス事業者から得られたリストをもとに、副業収入を把握することができます。
副業で得た収入を無申告にしていると、高い確率でバレます。
タレコミ制度もある
税務署には匿名で情報提供できる窓口があり、
誰でも「この人、申告してないんじゃない?」と思ったら国税局のサイトから通報できます。
例えば、SNSでの派手な収入自慢や、近所の人の噂話がきっかけになるケースもあります。
金融機関・暗号資産・FXも調査対象
副業収入は、銀行口座や取引履歴などを見ればすぐにわかります。
- 銀行口座(すでに解約済みの口座も調査可能)
- 国内の暗号資産(仮想通貨)取引:取引所が法定調書を国税庁に提出
- FX取引:取引履歴のリストを税務署が入手可能
税務調査が入りやすいケースを3カテゴリで整理
「数字の不自然さ」や「目立つ行動」から調査対象になることは珍しくありません。
調査されやすいケースを3つの視点で整理してみます。
帳簿編:数字の“違和感”が最大のリスク
帳簿のつけ方や経費のバランスに不自然さがあると、税務署はすぐに察知します。
- 売上と経費のバランスが極端(例:売上50万、経費47万など)
- 赤字続きなのに生活が派手(高級車・タワマン・旅行SNSなど)
- 11月・12月に経費が急増している
- 勘定科目が毎年違う(定まっていない)
- 所得の申告漏れ
- 居住地域の平均から見て異常な数字(地域平均とのギャップ)
業種編:税務署が特に注目している業種
以下のようなビジネスは、収入が見えにくかったり、過去に不正例が多かったことから、税務署にとって“要注意業種”です。
- インターネットビジネス
- アフィリエイト・ブログ
- ネット通販(物販、せどり)
- デジタルコンテンツ販売(note、教材、サロン)
- 暗号資産(仮想通貨)の取引
- FX・海外取引所を活用している
- ウーバーイーツ・スキルシェア・クラウドワーク系副業
- 同業他社に比べて数字の動きが不自然
その他編:行動・ライフスタイル・申告傾向
帳簿や業種だけでなく、「普段の振る舞い」や「申告のクセ」も見られています。
- 無申告
- 還付申告を毎年している
- 毎年黒字で売上が右肩上がり
- 急に高額な売上が発生した
- 本業と副業の収入差が極端に大きい
- SNSで目立っている(自慢投稿や収入公開など)
- タレコミを受けやすい(近隣や元関係者からの匿名通報)
- 消費税の還付申告者(不正還付が多い)
- 自宅や高級車を購入した(不動産の登記情報などが税務署にいきます)
- 金(ゴールド)を買っている(税務署に法定調書がいきます)
- 過去に重加算税を課された(税務署の中でブラックリストに入ります)
このように、税務調査は“グレーな経理”や“目立つ行動”に反応するようになっています。
正しく帳簿を整え、適切な申告を行うことで、自分を守ることができます。
税務調査でよくある指摘パターン
税務調査でよくあるケース。
- 確定申告していない(無申告)
- 収入の一部を申告していない(過少申告)
- 経費を多めに計上している(架空経費・家事按分ミス)
- 領収書や根拠のメモがなく経費が認められない
- 口座の動きと帳簿が一致していない
こういった場合、ただ修正するだけでなく、「ペナルティ付きの追徴課税」になることが多いです。
税務調査で課される4つのペナルティ(追徴課税)
① 過少申告加算税|10〜15%
確定申告はしていたが、税額が本来より少ない金額しか申告していなかった場合に課されます。
条件 | 加算税率 |
---|---|
調査で指摘される前に自主的に修正 | なし or 5% |
調査で修正を求められた場合 | 10% |
本税初めに申告した納税額超の部分 or 50万円超の部分 | 15% |
例:副業収入の一部を申告し忘れ、30万円の本税が追加 → 10%=3万円の加算税が発生
② 無申告加算税|5〜30%
本来確定申告が必要なのに、申告していなかった場合のペナルティです。
サラリーマンの場合、副業の所得が年間20万円を超えていたら申告義務があります。
状況 | 加算税率 |
---|---|
税務署に指摘される前に自主申告 | 0〜5% |
調査で無申告が発覚 | 15~30% |
悪質(繰り返し・隠蔽) | 15~30%+重加算税 |
注意:会社に副業を隠したくて「確定申告しなかった」は通用しません。無申告扱いで加算税が課されます。
③ 重加算税|35〜40%
特に悪質と判断された場合に課される最も重いペナルティです。
- 売上を意図的に隠していた
- 架空の領収書を使っていた
- 帳簿を二重に作っていた
こういった 「仮装・隠蔽」を繰り返した場合は重加算税にさらに10パーセントが加わります。
状況 | 税率 |
---|---|
法定申告期限までに申告した場合 | 35% |
法定申告期限までに申告しなかった場合 | 40% |
副業であっても、「意図的にごまかしている」と判断されるとアウトです。最悪の場合は刑事告発や社会的信用の喪失につながることもあるのでクリーンな申告をすることが一番です。
※一度重加算税を課されると今後も税務調査に入られる可能性が高くなります。
(税務署の中でブラックリスト入りします)
④ 延滞税|支払いが遅れると“利息”が発生
確定申告後に納付すべき税金を期日までに払っていない場合には、「延滞税」がかかります。
延滞税は年利で計算され、支払いが遅れるほど増えていきます。
延滞税の税率は毎年変わります。
遅延期間 | 延滞税の税率(2024年度) |
---|---|
2ヶ月以内 | 年7.3%程度 |
2ヶ月超 | 年14.6%程度 |
どのくらいの金額になる?【シミュレーション】
副業での所得を100万円申告し忘れていた場合
税目 | 概算金額 |
---|---|
所得税(20%) | 20万円 |
住民税(10%) | 10万円 |
無申告加算税(10%) | 3万円 |
延滞税(1年後に指摘) | 約4.8万円 |
合計 | 約37.8万円の追徴課税 |
あとから請求が来るのでお金を使ってしまっていたら対応できません。
ペナルティを回避するための5つの対策
- 毎月正確な帳簿をつける(クラウド会計ソフトを活用)
- 領収書・レシートは保存&メモ付きで管理
無ければメモだけでも残しておく - 副業専用の口座・クレカでお金を分ける
- 確定申告を期限内に必ず提出する
- 怪しい経費(家事按分など)は慎重に余裕を持って処理する
まとめ|副業でも「帳簿」が命
税務調査の対象は「高所得者」だけではありません。
最近では、クラウドソーシングやSNS発信、副業ブームに伴い、サラリーマンの副業もチェック対象になっています。
最終的に「是認するか、否認するか」を判断するのは、税務調査にやってくる国税調査官です。
もし税務調査が来ても慌てないように、日頃から帳簿を整え、根拠のある経費処理を行っておきましょう。
「ちゃんと申告・管理してます」と胸を張って言える体制が最大の防御策です。